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専門演習ⅡH(不開講)
田村 俊輔
大学名 清泉女学院大学
学部・学科 心理コミュニケーション学科 専門教育科目
開講キャンバス 上野 授業形態 演習
履修区分 必修 単位数 2単位
配当年次 3年 開講期
授業の概要

人はモノ(こころ)を語る動物であるとよく言われます。この「こころ」を語るメカニズム、そして、その意味を探っていくことは興味深い作業です。また、語られた内容が「こころ」であるならば、その内容を理解することは心理学が担う主要な役割でもあるでしょう。この演習では、春学期に履修した専門演習ⅠHを前提に演習計画が立てられています。演習ⅠHでは、ナラティブ研究の基盤となる理論的な基礎とナラティブ研究が支持する人間観を理解したうえで、ナラティブ研究の実例を読んできました。この専門演習ⅡHでは、第一に、これまで積み上げてきたナラティブ心理学の理論的な理解をより実際的な場面に適用できるようにします。第二に、多様なナラティブ心理学の研究の実例を概観しながら、この分野の研究と背景となる人間観に対する理解と共感を深めます。第三に、ナラティブ心理学がその研究に導入している方法論の学習をします。そして、その方法論を自らの研究に適用できるように準備を進めます。ここで学んだ方法を使って4年次には卒業研究の調査を行っていきます。

学習到着目標

ナラティブと心理の理解、及び、ナラティブの調査方法の学習を目標とします。先ず、人の語りにはこころの深層が隠されているという前提のもとに、物語分析を通してこころの理解を試みることを目的として、第二に、何気ない昔語りや日常会話を記録し、分析する方法論を学び、物語生成過程の調査ができるような企画立案力をつけ、それを実行する能力をつけることを到達目標とします。

成績評価方法

社会構成主義及びナラティブのまとめレポート30%、授業への関与30%、研究計画の作成40%の総合で評価します。

課題に対する
フィードバック方法

理論的な理解に対しては、授業中のフィードバックによって、理解を確認します。質的調査法の方法論は複雑であり、同時に柔軟性に富んでいます。この二つの性質がこの質的研究を難しくしています。皆さんはできる限り時間をかけて課題に取り組んでください。その結果に対するフィードバックは授業中、レポートや課題に対して個別に行います。各自の学習目標到達状況は7つの力ルーブリックアンケートを用いて自己評価します。

アクティブ
ラーニング要素
□外部連携の課題解決型学習(協定あり) ■ディスカッション・ディベート □グループワーク ■プレゼンテーション(発表) □実習・実技・実験 □フィールドワーク □リアクションペーパー
授業計画
授業項目・内容 / 各回の準備学修(予習・復習)について / 担当
1 内容

ナラティブ研究:人間の特質としての「語り」とその「語り」をデータとするナラティブ研究に関する振り返りをします。また、演習Ⅱにおいて大きな比重を占める「質的研究法」という方法論に関しての概要をお示しします。

予復習

専門演習ⅠHのプリントで復習をしておいてください。また、疑問点があったらこの時間に皆で分かち合いましょう。

担当
2 内容

精神分析と深層心理学の前提:無意識という心の仕組みとこの概念が人間観に及ぼす影響

予復習

精神分析、深層心理学の基本的思想と概念のまとめをします。該当部分を予習しておいてください。

担当
3 内容

Actual Minds and Possible Worlds:可能世界という概念と心の関係をまとめます。

予復習

ナラティブという見方の復習をしておいてください。この話題は演習Ⅰからの発展ですので、ブルーナーを熟読しておて下さい。

担当
4 内容

社会構成主義という見方 ①:ガーゲンの社会構成主義という見方の基本的な概念をを学びます。心理学・哲学的な文脈の中で学んでいきます。

予復習

ケネス・ガーゲンのプリント指定部分を予習しておいてください。(準備時間4時間以上)

担当
5 内容

社会構成主義という見方 ②:社会構成主義の考え方から出てくる人間の在り方(倫理)から、心理学を見直していきましょう。

予復習

ケネス・ガーゲンのプリント指定部分を予習しておいてください。(準備時間4時間以上)

担当
6 内容

社会構成主義という見方 ③:ナラティブとの関係の概説をします。特に、人間の特徴としての物語るという行為があるために個人がユニークな存在であるという民主主義の基本的な人間観に納得したうえで、あなた方が「わたしの心理学」を学んでいく基盤をつくりましょう。

予復習

3~6回目までの4回の授業を通して、その内容(社会構成主義、ナラティブ)を復習し、まとめてください。これが、最初の課題ともなります。

担当
7 内容

質的研究の基礎 ①:質的研究の実際について、一つの研究を例として示しながら、質的研究とはどのような研究で、何を目的として実施している研究なのかに答えます。また、質的研究の基本的な概念のまとめをします。

予復習

質的研究の実例の一つを読んでおいてください。

担当
8 内容

質的研究の基礎 ②:質的研究におけるデータに関する検討を行います。データ収集の方法、データ整理の方法、そして、データの信頼性の確保について等を扱い、簡単なデータ収集と整理ができるようにしましょう。

予復習

質的研究に用いる言語データの収集とデータ化を実施してください。この授業の予習ともなります。

担当
9 内容

研究の方法 SCAT(またはGTA)その方法と適用①:質的研究法の方法の一つであるSCATの基本的概念を学びます。質的研究におけるデータは主に言語となりますが、言語の分析をどのように行うかが、この時間のメインテーマとなります。

予復習

SCAT(またはGTA)の配布プリントを予習してください。

担当
10 内容

研究の方法 SCAT(またはGTA)その方法と適用②:各自が収集した言語データ(多くの場合は音声データ)を文字化し、SCATによってデータを分析します。

予復習

SCATで分析するデータを収集してトランスクリプトを作成してください。(準備時間4時間以上)

担当
11 内容

研究の方法 SCAT(またはGTA)その方法と適用③:分析結果からどのようにデータの再構成をして、そこから意味をくみ取っていくかを学びます。

予復習

各自、SCATを使っての分析を実施してください。

担当
12 内容

方法論のまとめ:SCATにもGTAにも利点と不利点があります。まとめとして、他の方法も含めて、質的研究法方法論の概観をします。

予復習

質的研究方法論に関する配布プリントを予習しておいてください。

担当
13 内容

分析の事例:物語分析 ①:物語分析をする際に使うツールの検討をします。今回はE.H.エリクソンの漸成的発達図式を応用して、このマトリックスの空白部分の意味の検討をしていきます。

予復習

提示された物語を読み、感想を自由に書いてください。

担当
14 内容

分析の事例:物語分析 ②:物語分析の結果を踏まえての意見交換を行いながら、この分析方法を研究に適用する方法を検討していきます。

予復習

物語を発達図式に当てはめて分析してください。

担当
15 内容

調査と研究のまとめ:最後のまとめと、最終課題として、研究計画の作成をしますので、論文の作成にかかわるプロセスのレビューをします。7つの力ルーブリックアンケートを行います。

予復習

最終課題の完成(準備時間4時間以上)

担当
16 内容
予復習
担当
準備学修
(予習・復習)時間

「各回の準備学修」項目を確認し、講義・演習は4時間(実技・実習は2時間)程度の予習・復習を奨励します。

教科書

配布プリントとお勧めの図書の紹介をします。この授業で使用する主要テキストは図書館にあります。

参考書・文献

クレイビル・滋子「グラウンデッド・セオリー・アプローチ:理論を生み出すまで」新曜社. ケネス・ガーゲン「あなたへの社会構成主義」ナカニシヤ出版.マイケル・ホワイト「ナラティブ・セラピー・クラッシックス:脱構築とセラピー」金剛出版.「質的心理学研究」各号

履修条件

専門演習ⅠH、及び、質的研究法履修済みであることが望ましい。

ICT活用 ■自主学習支援【学内ポータルを使用して課題等の読み物を提示します。】
実務経験
備考