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表象文化論
山貝 征典
大学名 清泉女学院大学
学部・学科 文化学科 専門教育科目
開講キャンバス 上野 授業形態 講義
履修区分 選択 単位数 2単位
配当年次 1年 開講期
授業の概要

この科目は、芸術表現や作品、活動に見られる「表象/representation」についての概念を理解することを目的とする。とある美術作品を見ている時、あなたの知覚にはなにが認識され、なにを頭の中に思い浮かべているのか?「隣にいる友達と同じ絵を見ているのに、友達はなんだか興味なさそう、私はこんなに感動しているのに」…というような関係性は、表象のとらえかたのすれ違いから生まれる。美術の作品や表現を中心に、その他の芸術分野も取り上げながら表象について考え、作品分析やテキスト読解の能力を身につけ、表象とは何かという問いへの積極的思考を修得する。

学習到着目標

表象/representationの基本概念について理解し、「芸術とは何か?」という問い、疑問に対して、主体的に課題を発見しながら掘り下げることができる力を身につける。また美術表現を中心に、芸術作品やその状況を鑑賞しながら、表象するもの/されるものを読み解くことができる論理的思考力を身につける。

成績評価方法

毎回書きためていく感想コメントを通じての授業参加姿勢度=15%、中間課題=25%、最終課題レポート=60%の割合で評価する。

課題に対する
フィードバック方法

リアクションペーパーによる感想や質問を翌週の授業で取り上げ、コメントをし、理解を深める。

アクティブ
ラーニング要素
□外部連携の課題解決型学習(協定あり) ■ディスカッション・ディベート ■グループワーク □プレゼンテーション(発表) □実習・実技・実験 □フィールドワーク ■リアクションペーパー
授業計画
授業項目・内容 / 各回の準備学修(予習・復習)について / 担当
1 内容

イントロダクション~表象とは:授業概要と全体の流れを説明する。また導入として各自がイメージする芸術とはなにかを考え、これからの学習の準備を行う。

予復習

初回の予習は不要だが、使用テキストの説明や今後の授業全体の流れについて復習して2回目に臨むこと

担当
2 内容

芸術という言葉の日本語訳の元となったarsやtechneの概念について学ぶ。また音楽や美術に関わる表現者の映像資料を元に、表象について理解を深める。

予復習

近代以前と以後の特徴・違いを明確に理解できるよう復習する

担当
3 内容

芸術家と勝負師と研究者:創り出されたものが持つ芸術としての価値や輝きの特徴を見つけ、また芸術家やそれに類する職業者の美意識の持ち方や変化・変遷について学ぶ。

予復習

美意識の持ち方や変化・変遷についての振り返り

担当
4 内容

日本画と洋画の違いとは?:いわゆる日本画というジャンルの成り立ちや分類には、日本の近代化に伴う矛盾やねらいが見え隠れする。画材や支持体の違い、表現技法や題材の違いなどを踏まえ理解を深める。

予復習

身近にある日本画作品を探し実際に確認する

担当
5 内容

古典的技法が持つ表現の意義:現代において、写実絵画/リアリズム絵画の持つ意味や新しい表現を探る。古典的描法でありながら、独自の視点で同時代的テーマの制作を続ける画家について学ぶ。

予復習

リアリズム絵画の代表的な作家や作品を観賞する

担当
6 内容

制作と作品:芸術が「作品」と呼ばれるためには、なにが必要なのか。またその作品の評価や巧拙の評価を下すのは誰なのか。素人や市民の暮らしと芸術的活動の関係を取り上げる。

予復習

ワークで行った芸術分析を各自で掘り下げる

担当
7 内容

芸術家と画家:作品制作をすることと、それを売って対価を得たり評価や格付けを受けることは、どのような関係があるのか?1人の画家の生き方の映像資料を見ながら考察する。

予復習

作品の評価基準についての振り返り

担当
8 内容

芸術と教育、図工と美術:芸術教科としての図工・美術の時間数は、年々減少している。芸術や美術を教えることはできるのか、どのような意味があるのかについて掘り下げる。

予復習

中間課題を課すので、これまでの復習も含めて取り組む(準備学習4時間以上)

担当
9 内容

芸術の価値と価格:美術収集家やギャラリストの活動を通じて、美術作品の保護や収集の意義を学ぶ。また作品の価値・価格はどのように決まって行くのか理解を深める。

予復習

購入できる作品について調べてみる

担当
10 内容

美術館や展覧会のシステムと芸術表現の関係:戦争画(戦争記録画)が美術史上どのような意味を持ち、現在どう取り扱われているか学ぶ。

予復習

戦争画に該当する代表的な作家や作品を観賞する

担当
11 内容

個人の思いと表現されてしまうものとの関係:人は、どのような時に芸術やそれに類するもの、また芸術であるとされる物を作り出すのか、展覧会「尊厳の芸術展」を通じて理解を深める。

予復習

「尊厳の芸術展」の振り返り

担当
12 内容

匿名性、有名性、無名性:芸術の表現には、匿名性や無名性があることが、特に重要な意味を持つものがある。ホスピタル・アートの分野における社会と芸術の関わりを学ぶ。

予復習

ホスピタル・アートの振り返り

担当
13 内容

災害・震災と芸術の関係:非常時や被災時の芸術はどうあるべきか?また悲劇や負の遺産と芸術の関係などを、ダークツーリズムや共生のキーワードをふまえて読み解く。

予復習

最終レポート課題について説明するので、その準備をはじめる

担当
14 内容

アール・ブリュット:生(き)の芸術:アウトサイダー・アートやアール・ブリュットとも呼ばれることがある芸術が持つ特徴、意義や分類そのものへの是非や疑問も含めて、その現状や問題点を学習する。

予復習

アール・ブリュット概要の振り返り

担当
15 内容

まとめ:芸術表現の分類、評価や価値の視点、古典と現代の表現の移り変わり、社会との関わりなど、これまでの授業で取り上げてきた項目を総括し表象の概念を理解する。

予復習

全体を通じて振り返りながら最終レポート課題に取り組む(準備学習4時間以上)

担当
16 内容
予復習
担当
準備学修
(予習・復習)時間

「各回の準備学修」項目を確認し、講義・演習は4時間(実技・実習は2時間)程度の予習・復習を奨励します。

課題やレポート提出が必要な場合はそれらに取り組み、常に授業内容の理解を深めるための学習時間が必要となります。

教科書

千住博『芸術とは何か - 千住博が答える147の質問』祥伝社新書、2014/886円

参考書・文献

ヴァルター・ベンヤミン著・佐々木基一編『複製技術時代の芸術』晶文社、E・パノフスキー『イコノロジー研究』美術出版社、岡本太郎『今日の芸術 -時代を創造するものは誰か-』光文社知恵の森文庫、秦野勝『面白いほどよくわかる!哲学の本』西東社

履修条件

哲学や心理学、文化史などの分野とも関係が深い学びになるので、関連の授業や本なども積極的に触れること。

ICT活用 ■双方向型授業【Googleクラスルームを使用し資料配布や課題の提出、コメント提出・添削を行う】
■自主学習支援【映像資料を活用し作品鑑賞や分析を行い理解を深める】
実務経験 ■実務経験の内容【美術館で学芸員としての勤務経験あり】
■所持している業務関連資格【学芸員、美術検定1級(アートナビゲーター)】
備考