短大のTOPICS(~2012)
「国際協力」in JICA駒ヶ根
2009年07月06日 【 お知らせ|国際コミュニケーション科 】
7月3日、4日「国際協力」の集中講義でJICA駒ヶ根訓練所に行ってきました。
JICA(国際協力機構)は日本の政府開発援助=ODA(融資、無償資金援助、技術協力)の実践機関です。JICA駒ヶ根訓練所は、その一事業である青年
海外協力隊で派遣される予定の方々が、任国に赴任する前に65日間の集中的な訓練を行う場所です。福島県二本松市と長野県駒ヶ根市の2ヶ所にあります。
「国際協力」では、JOCA((社)青年海外協力協会=元青年海外協力隊員が設立した団体)の協力を得て、青年海外協力隊訓練の一部を体験させていただく
とともに、参加する人材に必要とされる知識、スキルを集中的に学ぶ合宿形式の授業を行ってきました。内容は以下のとおりです。
① 世界の経済格差発生のメカニズムを理解する「貿易ゲーム」
② 一枚の人物写真をみてその人の人生の物語を想像するワークショップ「地球生活体験学習」(JOCA製作)
③ スリランカのシンハラ語の体験学習
④ カリブ海に派遣された元青年海外協力隊員の体験談(セント・ビンセント島)
そして3年目の今年は、これまでのプログラムに加えて、
⑤ 「「援助」する前に考えよう(開発教育協会(DEAR)製作)」というワークショップを取り入れました。
アイコさんという日本人学生がバーン村(架空)に旅行に出かけ、そこで遭遇した子どもたちの教育事情の悪さに心を動かされて、現地を訪れる外国人旅行者の
目につきそうなところに看板を立てて寄付(10$)を依頼、日本に戻ってから20万円の募金を集めて村にお金を送ったという物語について、「果たしてその
援助は適切なのか?」を議論するというものです。私たちは5、6人ずつ4つのグループに分かれて、このアイコさんの援助に賛成か反対か、それはなぜかを
ワークシートに書き出して発表し合い、グループの意見をまとめました。
反対、やや反対の意見では、「使途が分からない」、「寄付の説明不足」、「村の子ども、教育事情を知らせるべき」だからが多く、賛成では「行動力に敬
意」、「多くの人が少ない金額を出し合って役に立てればそれでいい」、という意見が出されました。議論を通じて、援助する側の思い込み、何が必要なのかを
明らかにしたほうがいいという意見集約が図られます。
ワークショップは次に、日本人がアイコさんと一緒にバーン村を訪問して村の現状を聞き取り、何をすべきかを調査するという設定で、村長、村落支援員、学校
の先生、村人たちと会議をするということになります。それぞれが与えられた役を演じるロールプレイを通じて、援助する側の問題、援助を受ける側の問題があ
ぶりだされていく過程を追体験していきます。
村長は寄付があって村人の生活が助かること、子どもたちの教材を購入したことを報告、寄付の継続を依頼します。アイコさんと日本人訪問者たちは、事前に考
えた疑問や質問を村長たちにぶつけます。しかし、村長は更なる寄付の増額を依頼するのみ。村人たちは蚊帳の外で、自分たちの意見が聞いてもらえないという
不満を募らせます。日本人はやはり現地に来て、山済みの生活問題に直面しどこからどうやって解決していけばいいのか、出された依頼に対応できない無力感を
感じます。
最後にファシリテーターが総括として、協力隊員であった自分も赴任して、何をしたらいいのかわからずに途方にくれたこと、援助をする人、される人の間に横
たわる深い問題であることを伝え、現地の人達とともに辛抱強く話し合い、考えてより良い方法を模索し続けてほしいとまとめてくれました。
学生たちは最初、決まったセリフもなく戸惑っている様子でしたが、やがて自分の言葉で役にふさわしい意見を言うようになっていきました。参加者たちが多様
な当事者たちの視点に立って、複雑な現実をできる限り広く考えるための認識の訓練といえるでしょう。仮想現実とはいえ、自分の意見を述べ、議論する学生の
姿は頼もしい限りでした。
国際コミュニケーション科 武田
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