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イベントレポート - 第2回リデザイン信州文化

文化トーク『第2回リデザイン信州文化~長野の伝統文化をつなぐ~』

ゲスト
由井真波 (有限会社リンク・コミュニティデザイン研究所代表)
大河内淳 (大河内家具工房代表取締役社長、木曽漆器伝統工芸士))
荻原夏子 (内山和紙作家)
関博子 (長野県長野地域振興局商工観光課職員)

日時:令和2年2月15日(土)、14時~16時
場所:清泉女学院大学 長野駅東口キャンパス 1階ピラールテラス

 昨年に続き2回目の文化トークを開催しました。このイベントは、伝統文化を地域資源としてのどのように存続・発展させていくかというテーマに取り組むものです。このテーマは、文化学科がこの地に存在する意義のひとつであると考えています。この課題の解決は容易なものではなく、私達だけで解決できるものではありません。そこで、様々な人と出会い、知恵を出し合う場を作ることから始めようと考え、このような公開学習会という形で文化トークを始めました。今回は、まず地域の文化やヒトと関わりながら「コミュニティデザイン」を実践してきた由井真波さんから「動機のデザイン」という考え方を学びました。そして後半は、由井さんを交えて、長野の伝統文化に携わる大河内さんと荻原さん、地域振興に携わる関さんからご意見を頂き、さらにフロアーの方々を交えて長野の状況についてディスカッションをしました。

 由井さんは、これまでの経験から、「デザインの成果を『納品』してもいつしか使われなくなった…現場を担う当事者の『自分ごと』になっていないのでは」と考えるようになったそうです。そこで当事者が主体者に変わることの重要性に気づき、「動機のデザイン」という考え方に達せられたのです。「主体者」とは、「当時者のうち自らの動機に裏打ちされ、自身なりに意味や意義を捉えてモノゴトに当たる状態にある人」のことです。特に、地方の小さな現場やデザインの専門家が不在のところでは、どのように主体者を作り出すかがコミュニティの再生や発展に重要になります。「動機のデザイン」は、現場での実践から導きだされた当事者が主体者に変わるプロセスモデルであり、それは長野の伝統文化の存続と発展に取り組むための有効なアプロ―チであると思いました。

 後半のセッションでは、木曽漆器職人で家具工房を運営されている大河内さんが伝統技術を使った新しい商品づくりのお話しをしてくださいました。デザインの力で変わる伝統工芸品の可能性をみた一方で、若者が主体者となり工房に定着することの難しさを知りました。飯山の内山和紙の継承者である荻原さんからは、一人また一人と継承者が消えていく現実を実感することができました。長野市に生まれ、飯山の伝統工芸の世界に飛び込んだ方です。現在は子育てや家事をしながら、和紙の仕事を精力的にされています。和紙という伝統文化の継承と発展の難しさを伺いながら、彼女の和紙との関わり方に文化継承の新たなの形を見つけました。そして関さんからは、行政の取り組みについて伺いながら、行政が「動機のデザイン」を実践することの難しさを知りました。3人のお話しの中には、共通した問題意識がありました。伝統工芸や伝統技術存続に対する危機意識です。それぞれの意識は点となり、あちらこちらに存在しているのです。問題を解決していくためには、いかにそれらの点を繋げていけるかが重要なのだと思いました。つまり、どのように動機をデザインできるかが課題なのです。

 フロアーにいた文化学科の学生から、伝統技術の習得は、段階的に生産工程を学んでいく従来のやり方ではなく、全ての行程を経験させることで、途中でやめていく若者を主体者に変えていけるのではないか、という意見が出ました。由井さんによれば、「動機のデザイン」のポイントは、当事者同士の働きかけ、当事者から周囲の関係者への働きかけが、主体者としての自立した行動に繋がってくるそうです。学生のような外部者も動機のデザインのプロセスに貢献することができるのかも知れません。今後も、文化学科は、当事者の方々と問題意識を共有し、点と点を繋げる場を創出していきたいと考えています。そしてその先にある課題解決の扉を探りつづけたいと思っています。

文化学科長 小泉 真理

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