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イベントレポート - ジブリとアニメ文化

特別講演会『ジブリとアニメ文化―日本文化の普遍性をつなぐ』

講師:野中晋輔氏
(株式会社スタジオジブリ 制作業務部取締役部長)

日時:平成30年11月10日(土曜日)、14時~16時
場所:長野NBSホール

 11月10日(土曜日)の午後に市内の長野NBSホールにて、文化学科設置記念の特別講演会が開催されました。当日は70名ほど方々にお集まりいただき、株式会社スタジオジブリの制作業務部取締役部長の野中晋輔氏によるご講演をお聞きしました。野中氏は「ジブリの生き字引」とも言われる方で、これまで宮崎駿氏や高畑勲氏と共に過ごしてこられた方です。

 ご講演の内容は、スタジオジブリ設立の経緯、作品制作でのこだわり、スタジオジブリという会社の様子、そして今後の取り組みについてでした。
 「アルプスの少女ハイジ」や「母をたずねて三千里」といった私たちの多くが昔テレビで見たアニメ作品が、実は宮崎駿氏と高畑勲氏が手掛けたものであったことを伺いました。またお二人が『アニメージュ』という雑誌を通じて鈴木敏夫氏に出会い、その後に数々のジブリ作品が生まれていったことを知りました。またジブリ映画の特徴として、作品第一主義、作家主義、劇場用映画主義についてのご説明があり、これまでのジブリ作品への理解を一層深めることができました。

 ご講演の後には、本学の芝山豊学長と野中氏でジブリ作品の普遍性や、スタジオジブリが作品を世界に送り出す中で感じる文化差についての意見交換がありました。ジブリ作品は日本向けに作られているそうなのですが、それが世界中で受け入れられている状況にジブリ作品の普遍性を観ることができます。

 フロアーの皆さんから寄せられた数々の質問にもお答えいただきました。その中で、「高畑勲さん亡き後のジブリはどうなるのか」という質問に対して、野中さんのお答えは「今、目の前にあるものに一生懸命に取り組んでいくだけ」というものでした。野中氏によると、宮崎氏は絵コンテを最後まで完成させてから制作に入るのではなく、連続小説を書くように、物語が進んでいく中で内容を変更しながら作っていくそうです。つまりそこには、目の前のことを大事にする宮崎氏の姿勢が伺えます。野中氏の今後のスタジオジブリに対する回答は、まさにそのような宮崎氏の制作スタイルを反映しているのだと思いました。一度引退表明をされた宮崎氏ですが、制作活動を再開されて新作「君たちはどう生きるか」に現在取り組まれているそうです。その制作意欲に感動するとともに、その完成を楽しみにしたいと思います。

 文化学科は、この4月に出来たばかりですが、素晴らしい学生たちに恵まれて順調に進みだしました。今回は日本が世界に誇るアニメ文化を取り上げて、作り手の思いや制作過程、加えてそのグローバルな広がりについて知ることができました。講演会を通じて、人間にとって文化は掛けがえのないものであり、人は文化を創りつづける存在であることを改めて実感することができました。
 文化学科は、文化に向かい合い、学生たちと共に文化による社会的貢献活動を展開していこうと思います。